使用しているガラスと技法について
2017/02/03 08:00:02
*** 模倣目的の閲覧はご遠慮ください ***
作品の制作に使用しているガラスと技法について、ご紹介します。
ガラスについて
作品制作に使用しているのは、ボロシリケイトガラス(硼珪酸ガラス)というガラスです。
あまり聞きなれないかもしれませんが、台所でよく見る『パイレックス』などの耐熱のガラス食器や、実験用の試験管などはこのガラスで作られています。
ボロシリケイトガラスの最大の特徴は、温度変化で割れにくいことです。
通常のガラスは、温度変化で割れやすいため、加工の際は、冷めないように全体を温めつつ、できるだけ一気に仕上げる必要がありますが、ボロシリケイトガラスの場合は、温度変化で割れにくいため、一度加工して冷めた後でも、何度も火に入れて加工することができます。(とは言っても、急激に温めたり冷ましたりすると割れますし、作品内に温度差が大きい箇所があればそこから割れてしまうため、温度に気を配って作業をする必要はあります。基本的には、一気に作ることができる作品であれば、そのほうがガラスに負担をかけないといえるでしょう)
何度も火に入れて加工ができるということは、何日・何ヶ月・何年もかけて作品を作ることができるということです。私の作品の中でも、込み入った網目状の作品などは、何ヶ月もかけて作っているものが多いです。また、何年も未完のまま少しずつ手を加えている作品もあります。そういった作品の制作は、このガラスを使用していなければ考えもしなかったでしょうし、現在のような作風にはなっていなかったと思います。
また、ボロシリケイトガラスは透明度がとても高いという特徴があります。
最初にガラスで作品を作ってみたいと考えたときに、この透明度の高さはとても魅力的でした。色を使用する場合は、他のガラスのほうが発色が良かったり良い色があったりする場合もあるのですが、私の作品では『透明』であることがとても重要であるため、透明度は、このガラスを使用する理由の一つとなっています。
技法について
私は、ガラス棒をバーナーで溶かして作品を制作しています。『バーナーワーク』や『ランプワーク』と呼ばれる技法です。
素材として使用しているボロシリケイトガラスが『耐熱』ガラスであるため、これを溶かして加工するのに、普通のバーナーではどうにもなりません。そこで、酸素を混合して高い温度の炎を出すことができる酸素バーナーを使います。
酸素を混合した火は、高い温度であると同時に、勢いのあるまっすぐな炎になります。この炎に対し、ガスの量を少なくしていくと、細い細い炎にすることができるため、細部まで作りこむような作品の制作が、比較的容易にできます。
特に、網目状の作品を作る時は、この細い炎で作業をしています。スピードを重視する場合は大きな炎でざっくりと作ることもできますが、その場合は網目はゆるい波型になり、線が太く、接合部も滑らかではない場合が多いです。作品にそれがマッチするのなら良いのですが、私は個々の網目の形や線の強弱が重要な作品を作りたいため、細い火でゆっくりと一つ一つの網目を作るようにしています。